
良いデザインを知る
日本一の産地から広がるものづくりの輪
ファクトリーブランド「ABE HOME SHOES」を展開する阿部産業株式会社は、日本一のスリッパ産地である河北町のスリッパメーカーです。受賞した「ABE HOME SHOES Factory Shop」は、工場内の倉庫を改装した多機能ショールーム。商品の体験・購入はもちろん、ワークショップや工場見学も可能で、つくり手と使い手が直接交流できる場として、産地を象徴する新たなランドマークを目指しています。
阿部産業株式会社の阿部弘俊さん、阿部宏子さんにお話を伺いました。

受賞作品「ABE HOME SHOES Factory Shop」
― 受賞作品を開発したきっかけは?
問屋依存度の高い体質からの脱却を目指し、ファクトリーブランド「ABE HOME SHOES」を立ち上げたのが2018年のこと。今では売上の5〜6割がオリジナル商品になりましたが、さらに多くの方に知っていただくため、直接履いてみてもらえる場所、発信できる場所、つながりが生まれる場所が欲しいという思いがずっとありました。その念願をかなえるべく、地域産業の交流・共創の場としてファクトリーショップの整備に踏み出しました。
― 開発にあたり、難しかったことや苦労した点は?
資金確保が必要だったため、直接販売や観光への寄与を目的に事業再構築の補助事業へ2度申請しましたが、いずれも採択されませんでした。計画から完成まで3年ほどかかり、予算の縮小や設計の変更を重ねながら、できる限り当初の目的に沿う形で進めることが大変でした。
― それをどのように乗り越えられましたか?
「つくり手と使い手が交流できる、日本一のスリッパ産地のランドマークをつくる」という目標を、設計事務所のLRさん、デザイン事務所のコロンさん、そして弊社の3者がぶれることなく共有し続けたことが力になりました。県のデザイン塾への参加をきっかけにデザイン活用を始め、自社商品やファクトリーブランドをつくり、念願のファクトリーショップが実現しました。

「作り手と使い手が直接出会える場所をつくりたい」そんな想いを形にした。実際に履き心地を確かめられる空間は、商談や地域の学校からの見学など、新たな交流を生み出す産地のランドマークへと広がっている。
― 受賞作品を通じて、購入者・利用者・生活者に何を伝えたいですか?
日本一のスリッパ産地でありながら、これまで試し履きできる場所がありませんでした。「家に帰ったらホッとする履物」というコンセプトをぜひ体感していただきたいですし、限定生地や限定カラーなどファクトリーショップならではの商品も揃っています。草履時代からの歴史展示や工場の作業風景の紹介など、つくり手の思いを感じていただけるコンテンツもあります。
― これからの展望は?
工場見学に加え、スリッパ製作体験などのワークショップも充実させ、地域の人やお客様との交流を深めていきたいと思っています。山形のものづくり産業の皆様と共創しものづくり体験ツアーを展開するなど、観光にも貢献できる場へと育てていきたいです。

職人の手仕事によって、一つ一つ丁寧に仕立てられていく。工場見学を通して、人の手でしか出せない温もりと確かな品質を肌で感じることができる。


