
良いデザインを知る
地域イベントをしっかり支える、三角形の力
果物や農業加工品、工業製品などの段ボール箱を製造する株式会社エスパック。受賞した「ワインDAドレ」は、ワインイベントでの困りごとをきっかけに生まれた、段ボール製のワイングラス用トレーです。組み立て簡単で最大4個のワイングラスを安定して運ぶことができ、企業広告などの印刷にも対応しています。
株式会社エスパックの髙橋大志さんにお話を伺いました。

受賞作品「ワインDAドレ」
― 受賞作品を開発したきっかけは?
山形ワインバル2024への出展がきっかけでした。自社の段ボール製簡易ベッドを使った休憩ブースの設置が決まり、せっかくなら休憩ブース以外でもイベントのためになるものもつくりたいと思ったのです。実行委員の方に話を聞くと、会場にはテーブルが少なく地べたで飲む来場者も多いため、ワイングラスの破損が多発していたといいます。また、団体参加の場合は代表者がまとめて複数杯を運ぶ場面も多いとのことで「これは助けになるアイテムが必要だ」と、設計に取り掛かりました。
― 開発にあたり、難しかったことや苦労した点は?
難しかったのは、誰でも迷わず組み立てられる構造にすることと、ワイングラス特有の形状への対応でした。コップと違ってワイングラスはくびれがあるため、ただ穴を開けただけでは姿勢が安定しません。さまざまな年代の方が来場するイベントで使ってもらうには、シンプルさと機能性の両立が必要でした。
― それをどのように乗り越えられましたか?
とにかく、ひたすら試作を繰り返しました。その中で気づいたのが、三角形の可能性です。底面を支えながら斜面でグラスの持ち手を固定できる、この形をベースに設計を進めました。さらに試作の結果、運搬中にグラスが溝の中で動いてしまうことが判明。弁を追加することで、安定して運べる形に仕上げることができました。アイデアが浮かんでから、わずか1〜2週間で完成形に辿り着きました。

山形ワインバル2026でも大活躍。自社の技術で地域のイベントを支えている。(企業提供)
― 受賞作品を通じて、購入者・利用者・生活者に何を伝えたいですか?
この製品を手にした方には、テーブルが少ない会場でも安心してワインを楽しんでいただきたいと思っています。また、地元企業の広告やイベントロゴを印刷できる点も特徴のひとつ。「段ボール屋がイベントに貢献できることが見つかった」という手ごたえが、開発チームの誇りになっています。
― これからの展望は?
日々の仕事は、製品を守るための梱包資材づくりです。でも、たかが段ボール、されど段ボール。設計次第でイベントを盛り上げるアイテムにもなれると、今回の開発で改めて感じました。これからも地域のイベントに寄り添う、新しいアイテムを生み出していきたいです。

工場から生み出されるものは、梱包資材にとどまらない。アイデアと技術を掛け合わせ、段ボールの可能性を広げるユニークなものづくりにも日々挑んでいる。


