歴史×デザインで、大正時代からの伝承野菜を次世代へ

良いデザインを知る

歴史×デザインで、大正時代からの伝承野菜を次世代へ

2026.08.21

山形エクセレントデザイン2025 入賞

與治兵衛きゅうり保存会

「與治兵衛きゅうり」は、鶴岡市温海の小国地域で大正時代からつくられてきた伝承野菜です。地域住民が保存会を立ち上げ、地域内外に魅力を伝えるためブランディング。小国地域の魅力のひとつとして発信することで関係人口の増加につなげています。
與治兵衛きゅうり保存会の五十嵐敏也さん、五十嵐徳泰さん、FUNEの大瀧香奈子さんにお話を伺いました。

受賞作品「與治兵衛きゅうり」

受賞作品「與治兵衛きゅうり」

― 受賞作品を開発したきっかけは?

大正時代、養蚕の技術を学ぶために與治兵衛家の先祖が新潟県村上を訪れた際、地元の方からきゅうりの種を譲り受けたことが與治兵衛きゅうりの始まりです。門外不出で代々大切に受け継がれてきたこのきゅうりは、親戚の五十嵐孝昭さんへと種がつながれ、小国地区でひっそりと栽培が続けられてきました。生産者が年々減少する中、2024年に保存会を発足。単にきゅうりを栽培し販売するだけでなく、背景にある物語や地域の魅力も伝えたいと、ロゴやのぼり、リーフレットを制作しブランドづくりに取り組んできました。

― 開発にあたり、難しかったことや苦労した点は?

與治兵衛きゅうりの歴史や価値を、初めて見る人にわかりやすく伝えるにはどうすればいいか、かなり頭を悩ませました。認知度が低く見た目だけでは魅力が伝わりにくいため、地域の伝統文化をデザインに落とし込む必要があり、その点について何度も試行錯誤しました。また、幅広い年代に親しみを持ってもらえるよう、昔ながらの雰囲気と現代的なデザインとのバランスにはとても気を遣いました。

― それをどのように乗り越えられましたか?

地域に残る歴史や行事、栽培にまつわる資料を調べ、生産者の声も取り入れながらブランドコンセプトを整理しました。ロゴを版画のようなイメージで構成する、のぼりに與治兵衛きゅうりのグリーンのグラデーションを用いるなど、伝統を感じられる要素を取り入れました。また、多くの人に地域の宝として親しんでもらえるよう、収穫体験やSNSでの情報発信にも力を入れてきました。

與治兵衛きゅうりは、ころんとした丸みのある形状が特徴。収穫時期の7月中旬から9月上旬に、近隣の産直等で購入することができる。

與治兵衛きゅうりは、ころんとした丸みのある形状が特徴。収穫時期の7月中旬から9月上旬に、近隣の産直等で購入することができる。

― 受賞作品を通じて、購入者・利用者・生活者に何を伝えたいですか?

與治兵衛きゅうりは、梨のようなみずみずしさと爽やかで甘く繊細な味わいが特徴です。塩漬けにすると皮だけが残るほどほとんどが水分で、養蚕の暑い作業の合間に天然の水筒として水分補給に食べられていたと伝えられています。7月中旬から9月上旬が収穫時期で、小国の湧き水で冷やして、生のままもろみや味噌をつけても、なますやサラダにしても、焼いても煮てもおいしくいただけます。きゅうりそのもののおいしさだけでなく、その背景にある歴史や文化、人とのつながりにも興味を持っていただき応援していただくことが、地域の未来を支える力になることを伝えたいです。

― これからの展望は?

さらに認知度を高めていくため、種を保存し次世代へつなぐ取り組みを続けながら、與治兵衛きゅうりブランドを広く発信し、近隣の産直や旅館、飲食店での取り扱いも少しずつ増やしていきたいと考えています。また、小国地区にある宿泊施設・楯山荘での料理教室や精霊馬ワークショップのような体験型の取り組みも広げ、いつかは「きゅうり祭り」も開催してみたいです。関係人口を増やしながら、地域の人とともにこの伝承野菜を守り育てていきたいと思っています。

地域の人などと相談しながら様々な食べ方を考案している。生のまま味噌をつけて食べるときゅうりの甘さと瑞々しさが際立つ。

地域の人などと相談しながら様々な食べ方を考案している。生のまま味噌をつけて食べるときゅうりの甘さと瑞々しさが際立つ。