
良いデザインを知る
地域の知見とIoTの力で、人と農地を害獣から守る
産業機器向けシステムや画像認識システムの開発・製造を行うマクセルフロンティア株式会社。受賞した「害獣捕獲監視システム マタギっ娘」は、シカ、イノシシ、クマなどの害獣が捕獲されたらメールが届くシステムです。設置・管理・操作を簡単にすることで捕獲作業を効率化し、害獣による被害軽減と農家の営農意欲の減退防止、耕作放棄地の減少に貢献しています。
マクセルフロンティア株式会社の高野響さんにお話を伺いました。

受賞作品「害獣捕獲監視システム マタギっ娘」
― 受賞作品を開発したきっかけは?
親会社から開発を委託された河川水位モニタリングの技術を活かし新たなビジネスを検討していた時期と、イノシシによる農作物被害の拡大化深刻化が世間的に大きな話題になった時期がちょうど重なり、社内の狩猟免許保有者から「害獣が罠にかかったことを通知するシステム」の提案があったことがきっかけになりました。当初はZETA通信を使った独自ネットワーク型でしたが、全国の自治体や狩猟者へのヒアリングで「もっと手軽に使いたい」というニーズが判明し、携帯電波を使う現在の製品へと進化しました。
― 開発にあたり、難しかったことや苦労した点は?
最大の課題は電源の問題でした。他社製品は単三乾電池12本や太陽光パネルを使用しており、持ち運びや設置、ランニングコストに課題がありました。単三乾電池3本での動作を目標に開発を進めましたが、LTE-M通信は消費電力が大きく、乾電池の電圧低下により通信が失敗するケースが発生しました。基板のつくり替えも必要となり、期間とコストがかかってしまいました。また、風による枝や木の接触で磁石が外れてしまう誤検知をいかに防ぐかも難題でした。
― それをどのように乗り越えられましたか?
社内のハードウェア・ソフトウェアエンジニアとともに修正と評価を繰り返しました。内部の部品を変えることで電圧低下の問題を解決し、捕獲数や通信頻度、動作環境により多少前後するものの、単三乾電池3本で約1年という長時間動作を実現しました。誤検知については強力な磁石を採用することで解消しました。また、上山市など害獣被害に困る自治体とともに実証実験を重ね、現場の声を製品改善に反映させながら開発を進めていきました。

設置の様子。親機やソーラーパネル等の機材はなく、設置・管理が容易で、見回りの時間が激減したという声も届いている。(企業提供)
― 受賞作品を通じて、購入者・利用者・生活者に何を伝えたいですか?
電気柵は畑や田んぼの被害対策としては有効ですが、対象となる動物がその敷地内に入らなくなっても、電気柵のない他の畑や田んぼに入ることは止められません。より効果的な農作物被害対策は「電気柵+捕獲」と考えています。狩猟者の高齢化が進む中、IoT機器を活用した効率的な見回りにより罠の台数を増やすことで、人的被害や農作物被害を低減し、みんなが安全・安心に暮らせる社会を目指しています。
― これからの展望は?
西表島や小笠原諸島などの島しょ部でヤギ捕獲にも活用されるなど、活躍の場は全国へ広がっています。導入のための補助金もあり、より多くの自治体に使っていただけるよう、まずは実際に試してもらい、製品の良さを実感していただくことを大切にしています。社会貢献のための製品として、これからも自社の技術を活かした新たな製品開発を進め、人的被害や農作物被害の低減に貢献していきたいと考えています。

シカ・イノシシ・クマなどが罠にかかったらメールが届くシステム。全国で活用が進んでいる。(企業提供)


