日々の暮らしが楽しくなる、地域の魅力を掘り続けて

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日々の暮らしが楽しくなる、地域の魅力を掘り続けて

2026.08.21

山形エクセレントデザイン2025 プロジェクトデザイン賞受賞

新庄・最上地域広域情報誌制作委員会

とりもつラーメン、あけぼの町、運び屋、ちょっと怖い話、夜と女たち。2016年12月の創刊以来、さまざまな切り口で新庄最上地域を紹介してきた『季刊 にゃー』は、いかにして生まれ、つくられてきたのでしょう。
編集長を務める吉野敏充さんにお話を伺いました。

受賞作品「山形県新庄・最上地域広域情報誌 季刊にゃー」

受賞作品「山形県新庄・最上地域広域情報誌 季刊にゃー」

子どもの頃からよく知る人の、一言がきっかけに。

― 創刊までの経緯について教えてください。

「新庄にフリーペーパーないから、つくってよ」。生まれ育った学区の先輩にあたる、ある市役所職員のこんな一言がきっかけでした。ネットでちょこっと探せば見つかるような情報だけのものをつくるのは嫌だなと思ったときに、地域の人たちの人生や、この地域ならではのものを深掘りしてみたらおもしろいんじゃないかと思って。で、その先輩に話してみたら「じゃあ自由にやってみてよ」って言ってもらったのが季刊にゃーの始まりです。

― 行政からの依頼としては、ずいぶん自由度が高かったんですね。

実はキトキトマルシェも、その人からの依頼でスタートしていて、僕の中では結構大きな存在なんです。今は役職が上がったこともあって、自分でも「俺、おもしろくなくなったわ」みたいなこと言ってつまらなそうにしていますけど、いろいろなプロジェクトで声かけてくださり、ご一緒させてもらいましたね。

これまでに発行された「季刊にゃー」の数々。中でも第10号「統計と取材から見る 最上の普通」は、地域の普通や常識をユニークな視点で問い直した号で、最も大きな反響を呼んだ。(企業提供)

これまでに発行された「季刊にゃー」の数々。中でも第10号「統計と取材から見る 最上の普通」は、地域の普通や常識をユニークな視点で問い直した号で、最も大きな反響を呼んだ。(企業提供)

真相へとつなぎ、導く、人の力。

― 創刊号は、新庄市の名物「とりもつラーメン」に焦点を当てた内容でした。どのように制作を進めたんでしょう?

まずはテーマの選定ですが、自分の周りの人に話を聞いてみても、とりもつラーメン誕生の経緯を知ることができなくて、詳しく調べてみようと思ったんです。いろいろな人から情報を集める中で発祥の店に行き当たり、すぐに取材依頼の電話をしてみたら、まさかの取材NGで。

― 断られちゃったんですね。

はい。なので違うアプローチが必要だと思い、さらに人づてに情報を集めました。そうすると出てくるんですよ、関わりが深い人が。そんなキーパーソンを何人か経て、お店に話を通してもらって無事取材させてもらえることになりました。取材当日、当初NGを出されたことをお伝えすると「私NG出してないわよ」って言うんですよ、おばちゃんが。よくよく聞いてみたら、営業中にどやどやと来られて、食べに来ているお客さんに迷惑かけたくない、ということだったようで、詳しい話を無事お聞きすることができました。

地域に人がいる限り、テーマはなくならない。同じ時間を共有し、その瞬間にしか聞けない声を聴き、その姿を目で確かめながら、今この地域に存在するかけがえのない記憶と生きた証を丁寧に記録し、伝えている。(企業提供)

地域に人がいる限り、テーマはなくならない。同じ時間を共有し、その瞬間にしか聞けない声を聴き、その姿を目で確かめながら、今この地域に存在するかけがえのない記憶と生きた証を丁寧に記録し、伝えている。(企業提供)

誰かに話したくなる地域のおもしろさを、これからも。

― 企画や制作の進め方、その中で大切にしていることは何ですか?

企画の進め方は、創刊からほぼ変わっていなくて、僕とライターのスタッフで壁打ちをして少しずつ固めていく感じです。お茶飲み来てもらっては喋ってを何度か繰り返し、メインの取材対象者を1人決めて、取材できそうか確認しながら少しずつ対象者を増やしていくような流れです。
大切にしているのは、自分たちが本当におもしろいと思えるかどうか。これは常に意識するようにしています。あとは、インタビューを丁寧にすることはもちろんですが、制作する上でその人と同じ体験をすることを大切にしています。話を聞いて知れることと同じくらい、体験を通じて知れることがあると思っているので。あとは、感じたリアルをそのまま書くということですかね。変に持ち上げたり、下げたりしないということですね。今、この地域に暮らす人の生き方を記述しているメディアはない。そのリアルに書いた記録が100年後の郷土研究に使われたら嬉しいです。

― 具体的な、今後の展望はありますか?

にゃーをつくり続けているモチベーションって、「地域を盛り上げたい!」みたいな肩肘張ったものではなく、「自分が見つけたおもしろい人、おもしろい場所を知って、一緒におもしろがってほしい」という気持ちなんです。もちろん、結果として地域が盛り上がれば嬉しいけど、まずは日々の暮らしがちょっと楽しくなることが大事かなと思っています。生まれ育った新庄最上地域ではありますが、まだまだ知らないことがたくさんあるはずなので、少しずつ発掘していき、これからもみなさんと一緒におもしろがっていけたらいいですね。

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ライター:sponge 工藤 拓也
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