
良いデザインを知る
フルーツとものづくり。2つの力で、山形県らしい豊かさの循環を生み出す
「やまがたフルーツ150周年に向けて、何かできないか」。そんなアイデアをきっかけに生まれたシャツやスリッパ、靴下、紙製品は、さくらんぼの木を剪定した際に出る枝が原料になっています。
さくらんぼ農家やものづくり企業など、さまざまな県内の企業をつなげてプロジェクトを率いた、一般社団法人HAKUTAIの大城誠司さんにお話を伺いました。

受賞作品「さくらんぼの剪定枝を利用した県内企業とのプロジェクト」
たくさんの人たちと、やまがたフルーツ150周年を盛り上げたい。
― そもそもの開発のきっかけを教えてください。
2023年に、県の農林課さんから相談があったことがそもそものきっかけです。2025年に、県内でさくらんぼや西洋梨などの栽培が始まってから150年という節目の年「やまがたフルーツ150周年」を迎えるにあたり、何か盛り上げるような取り組みができないかという相談でした。
お話を伺い、さくらんぼの剪定枝が毎年活用されずに廃棄されていること、それが農家さんの負担になっていることに、ふと思い当たったんです。
現在HAKUTAIのメンバーである株式会社Rinnovationさんとは元々お付き合いがあり、サトウキビの搾りカスを使ってジーンズをつくっているなら、さくらんぼの剪定枝も繊維にできるんじゃないかと相談してみたら、できそうだということで、繊維化をするプロジェクトが動き出した感じですね。
― HAKUTAIの設立も、プロジェクトがきっかけということですか?
そうですね。さまざまな人に関わっていただきたいという思いもあり、それぞれに得意分野が異なる3社で立ち上げました。
ただのアップサイクルではなく、さくらんぼを感じられる繊維化を。
― 剪定枝を繊維にするまでの工程について教えてください。
まずは枝を細かなチップ状にして、パウダー状にします。その後、パウダーをパルプと混ぜて紙をつくりますが、ここで工程が分かれます。シャツやスリッパの材料「和紙糸」になるものは、後の工程で糸と撚り合わせるため薄い紙にします。一方、ノートなど紙製品にするものは、製品にそのまま使える厚みのある紙にします。
― 加工はすべて県内で行っているんでしょうか?
現状、パウダーにする工程とその後の紙にする工程は、県外で行っています。将来的にはすべて県内で行いたいと考えています。

左から、県の「カーボンニュートラルやまがた県民運動」のノベルティと試作品のコップ。さくらんぼの剪定枝の風合いを生かしながら、より安定した製造を目指し、県内ものづくり企業とともに、試行錯誤を続けている。
― 加工工程では、どんなことを大切にしていますか?
一番大切にしているのは、製品になったときに、さくらんぼを感じてもらえる材料にすることですね。さくらんぼの剪定枝を使っていることが、このプロジェクトの肝な訳ですが、枝のパウダーの比率が高過ぎるとどんどん色が濃くなってしまうんです。紙をつくる際の配合比率を工夫することで、和紙糸にしたときにほのかにピンク色を帯びた生成りにすることができるんですが、そこを最も大切にしています。
製品化の過程で実感した、山形県のものづくり力。
― 製品化の過程では、どのような苦労がありましたか?
苦労したのは、設備との相性ですね。県内のさまざまな企業さんを訪問し、和紙糸や紙を紹介してきましたが、「さくらんぼのアップサイクル」という点にはみなさんすごく共感してくださいました。ただ、和紙糸も紙も、通常のものと比べると少し変わった性質を持っているため、既存の設備だと製造が難しいというケースがとても多かったんです。その課題に対し、培われてきた知恵と技術力で見事に製品化してくださった寒河江市の佐藤繊維さん、河北町の阿部産業さん、JR東日本さんには本当に感謝ですね。
― 今後、どのようにプロジェクトを展開していきたいですか?
フルーツ王国としての豊かさと、堅実なものづくりの力。剪定枝を使ったこの素材は、山形県が持つ2つの魅力をうまく表現できるものだと思っています。さらにたくさんの企業さんに使っていただけるよう、材料としても製品としても精力的にプロモーションに取り組んでいきたいです。そして、このプロジェクトが生み出す循環が、将来的にはさくらんぼ農家さんを力強くバックアップできるよう成長を続けていきたいです。
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ライター:sponge 工藤 拓也
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持続可能な循環モデルの実現を目指して、地域のものづくりプロセスそのものの構築に取り組んでいる。


